【山梨フルーツライン】生産者と消費者へのまごころが詰まった営農塾【インタビュー第二回】


新たしい形で農業の世界で流通を切り開いている山梨フルーツライン(【第一回インタビュー】常に新しいことに挑戦し続けるフルーツ農園)。販売・生産だけでなく、営農塾マルニを通して生産者の育成・支援も行っています。その営農は、生産者の気持ちに立ってつくられたかつてない方法として業界で話題となっています。その営農塾について、農園を運営されている手塚建(たつる)さんに迫ってみました。

 

ノウハウから土地まですべて用意してくれる営農塾

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―フルーツラインは独特のシステムで営農の塾(営農塾マルニ)も運営されていますよね?いったいどのようなシステムなのでしょうか?

手塚建さん(以下、手塚):農業をやりたい人が来たらまず、ぶどう農園をやりたいのか、桃農園をやりたいのかっていう話になるかと思います。ただまずは、営農塾がもっているスモモ、桃、ぶどう、柿の土壌を一通り経験してもらうんです。その経験の中で本当に自分がやりたいことを決めていきます。ぶどう農園をやりたいと思ったら、ぶどうの適地があるので、今度はそこの土地を探してあげるんです。例えば、大体一人当たり1ヘクタールから2ヘクタール開墾してあげるわけですね。基本的にはタダで提供して、お給料を払う形になります。つまり、就職してもらうということですね。
大体独立する目安で、自分で作りたいものが出てくるから。例えば「独立を三年後にしたい」ってなれば、三年を目安に仕上げていく。そこでもう営農できる環境を作っていってあげるわけね。入塾したと同時に機械類も揃えるんですけど、それも独立するときにはプレゼントします。

 

徹底して人の役にたつ

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―そこまで至れり尽くせりのサポートですと、何か決まりごとがあったりするのでしょうか?
手塚:独立後にフルーツラインに出荷しなければならないといった約束ごとなどは一切ありません。仲介手数料も取らない。販売は自由なんです。好きなように販売してもらって構わない。ネットで販売してもいいということです。
販売しながら良い物を作るのって絶対に不可能なんです。良い物を作りたいから農業したいっていう人達が多くて、販売したいっていう人はフルーツラインに就職しますね。
販売希望者は、フルーツラインに就職して販売・営業しますが、独立願望が強い人は作る方を選びます。自分の名前を商品に入れて販売できる環境は、フルーツラインぐらいしかないので。お客さんが「この人のものを欲しい」って言われたら、そこに行くルートを作ってあげるから結局自分で販売してるのと変わらないんですね。値段の付け方も、各個人の農家さんが付けてくるから。大体今年は巨峰が10トン穫れて、いつからいつまで収穫期があって、一日大体1,000パック、1,000房穫れるので、大体1パック300円、500円欲しいですっていうのを提出してもらうんです。

ただ、本当に良い物を作っていかないと、自分が思っている金額で販売できなかったり、入札がうまくされなかったりするんですよね。だから、まずは私が交渉するんです。本当に自分で値をつけて販売する人には「もうちょっと下げないとダメだよ」ってアドバイスをしたりもしますね。逆に、うちでトップクラスの人の名前っていうのは、どこに行っても「欲しいです」って最初に名前が挙がってきます。むこうから「〜さんの桃がどれくらい欲しいです」と言われるようになれば、自然と自分で販売もできてくるわけです。

だからすごい良い物をたくさん作る人っていうのは、自然とお客さんが付いて来るっていうシステムなんですね。そうなると自分で販売しているのとほとんど一緒ですよね。フルーツラインっていう名前、ブランドを使っているだけで、個人販売になっているので。

 

自分たちだけの理念や理想を共有する仲間作り

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―営農をはじめたきっかけはなんでしょうか?
手塚:フルーツラインは最初7人ぐらいで始まりました。その後、フルーツラインに納品してくれる人の農家が大体500世帯ぐらい集まり、「物が集まればいい」という形になって元々のフルーツラインの理念からちょっと外れかけた時代があったんです。
基本理念の1つの中に「安心・安全」というものがありまして、フルーツラインのルールの中でしっかり消毒をやっているか定かではないことに気付いたんです。そこで、会社を設立するという名目で事細かな約束事を決めました。「今日、この畑で、消毒で何と何を散布しました」「今日、この畑で何をどのくらい収穫しました」といった全部の仕事の報告を義務化しました。それで500世帯ぐらいから、150世帯ぐらいにどんと落ちたんですよね。
志が同じような人達が集まって、前よりももっと信頼の置ける商品を提供できるようになったのですけど、その人達の高齢化が進んで年々商品が揃わなくなるっていうことが起きてきました。フルーツラインを維持するには生産者を集めるんじゃなくて、または木を育てるんじゃなくて、人を育てないといけないって思ったわけです。

最初は色んな農家なので、代々伝わった作り方っていうのがあって、クセが出るわけね。そうすると商品にバラつきが出てしまいます。
そこで、他の農家を知らない人達を雇用して、自分達の理念や理想を共有することで、商品の均一化と安全が図れるんです。

やりたい人を募って、うちで教育して、独立したいっていう人には作りたい作物と土地を渡して営農させる。そうすれば、自然とフルーツラインというのは半永久的に存在できるし、お客さんにとってもいつでも同じ商品が手に取れるということで、営農塾っていうのを作ったんですよね。

営農塾っていうのはけっこう大変なことだと思うんです。野菜は種蒔いてその年に収穫ができるんだけど、変な話一年で二回失敗しても、三度目当たればいい。ほうれん草当たる時もあるし、小松菜当たる時もある。
果物は、桃なんか木植えてから五年しないと収穫あがんないんです。ぶどうもそうだし。柿なんか八年、十年かかりますからね。そこに投資するっていうのが非常に困難な世界なんですね。

 

農協も手助けする心配り

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―他に何か農家さんに支援していることなどはありますか?
手塚:農家を助けるって意味だと、物の売り込みが下手なので、うちが他の農協の物を売ってあげたりしていますね。他の農協で余っているものを、うちの販路に乗っけてあげています。その場合は、フルーツラインとしての商品じゃないですけどね。農協に出してない人達でも、いつでもうちはウェルカムで、個人に対してもしていますね。

あとは、うちのパイプ・販路を使って他県の生産者の、生産者団体、量販店の人達に無償で紹介するってことはよくやってます。

実際に良い取引すれば、うちが取引している量販店さんも喜ぶわけです。今例えば、「いちごが不足してる」って言ったら、知り合いのところに連絡して取り寄せてあげるんですね。あとは「すごい余ってるんだけど」っていう商品があるときは、捌ける場所を探すなんてことも。

 

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【山梨フルーツライン】
桃、ぶどう、柿を中心に、安心でおいしい果物を丹精込めてお客様に提供し続けている山梨県の農業法人。生産・販売だけでなく、未来の日本の農業を担う生産者育成・支援も務めている。
http://fruitsline.jimdo.com/